
1. 誕生の背景:「人手不足」という切実な悩み
回転寿司の創業者である白石義明氏(元禄寿司)は、戦後の大阪で立ち食い寿司店を経営していました。当時、彼の店は「安くて旨い」と連日大繁盛でしたが、その人気がゆえに深刻な問題に直面します。それが寿司職人の人手不足です。
寿司は、職人が客の注文を受けてから一つ一つ握るスタイルが基本です。しかし、客が次々と押し寄せる店で、少ない職人では対応しきれず、客の待ち時間は増えるばかりでした。白石氏の頭の中には、「どうすれば寿司を効率よく、かつ均一に提供できるか」という課題が常にありました。
2. 革命的ひらめきの瞬間:ビール工場にて
その切実な悩みを抱えていたある日、白石氏はビール工場の製造ラインを見学します。
次々と流れてくるビール瓶を運ぶベルトコンベアを見た瞬間、「これだ!」と閃きました。このコンベアに寿司を乗せれば、職人が個別に注文を取る手間を省き、お客様が好きなものを自由に取れるようになるのではないか。これが、世界初の回転寿司システム**「コンベヤ旋廻食事台」**のアイデアが生まれた瞬間です。
3. 実現までの苦闘と「寿司が止まる」問題
ひらめきは得たものの、寿司を乗せてスムーズに回すまでには多くの困難がありました。
- 技術的な難関: 特にカーブの部分で皿がスムーズに曲がれない、寿司が倒れてしまうといった問題が続出しました。
- 試行錯誤: 白石氏は自身でコンベアを開発し、試作を繰り返します。カーブの構造を工夫し、寿司の皿に専用の治具(ストッパー)を取り付けるなど、幾度もの失敗を乗り越えて、ようやく実用化にこぎつけました。
4. 世界初「廻る元禄寿司」開店と特許独占時代
1958年(昭和33年)、大阪府東大阪市に**「廻る元禄寿司」1号店**がオープンします。
- 安価と明快さ: 高級だった寿司が、明確な一皿価格で提供されるスタイルは、商人の町大阪でたちまち話題となりました。
- 実用新案の取得: 1962年には「コンベヤ旋廻食事台」として特許(実用新案)を取得。この特許により、約20年間は元禄寿司のフランチャイズチェーン以外、同じ形式の回転寿司は事実上開店できませんでした。この特許独占時代が、回転寿司というビジネスモデルの基盤を固めることになります。
5. 転機となった大阪万博(1970年)
回転寿司が全国的な認知度を獲得する決定的な転機となったのが、1970年の**日本万国博覧会(大阪万博)**への出店です。国内外から数千万人もの人々が訪れる巨大なイベントで、元禄寿司のブースは食事優秀店として表彰され、その斬新なシステムが世界中から注目を集めました。
これにより、回転寿司は大阪発のローカルなアイデアから、日本の革新的な食文化の一つとして認識されるようになりました。


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